令和三年沖縄全戦没者追悼式 内閣総理大臣挨拶

令和三年・沖縄全戦没者追悼式が執り行われるに当たり、沖縄戦において、戦場に斃(たお)れた御霊(みたま)、戦禍に遭われ亡くなられた御霊に、謹んで哀悼の誠を捧(ささ)げます。
先の大戦において、沖縄は、凄惨な地上戦の場となり、罪もない民間人を含め、二十万人もの尊い命が失われました。人々の平穏な暮らしは、にわかに戦乱の渦に巻き込まれ、この地の誇る美しい自然、豊かな文化も、情け容赦なく破壊されました。多くの子供たちの命が奪われた対馬丸事件のような耐えがたい出来事もありました。
沖縄戦から七十六年を迎えた今、私たちが享受している平和と繁栄は、犠牲となった尊い命と、沖縄の人々の筆舌に尽くしがたい苦難の歴史の上に築かれたものです。平和の礎(いしじ)に刻まれた方々の無念、残された方々の言葉では言い尽くせないほどの悲しみと苦しみ、そして沖縄が負った癒えることのない深い傷を、今を生きる私たちは、深く心に刻み、決して忘れてはなりません。
我が国は、戦後一貫して、平和を重んじる国として、真摯に、そしてひたむきに歩んでまいりました。戦争の惨禍を二度と繰り返すことなく、世界の誰もが、平和で、心豊かに暮らせる世の中を実現する。この決然たる信念を貫き、不断の努力を重ねていくことを、改めて、御霊にお誓い申し上げます。
沖縄の方々には、永きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいております。この現状は、何としても変えていかなければなりません。
この思いを胸に、私は、これまで多くの沖縄の方々と直接お会いし、基地負担について率直なお気持ちを伺い、沖縄のため、具体的な成果をあげるべく、全力を尽くしてまいりました。
平成二十八年には、北部訓練場の過半の返還が実現しました。この跡地を含む沖縄島北部及び西表島については、現在、世界自然遺産登録に向けた手続きが進められています。
また、平成三十年に引き渡しがなされた西普天間住宅地区跡地では、今後の跡地利用の先行事例として、高度な医療・研究機能の拡充や地域医療の向上を目指した健康医療拠点の整備が進んでいます。
引き続き、「できることはすべて行う」との方針の下、沖縄の基地負担の軽減に向け、一つ一つ、確実に結果を出していく決意であります。
沖縄は、美しい自然に恵まれ、アジアの玄関口に位置するなど、計り知れない優位性、潜在力を有しています。新型コロナウイルスの影響が長引く中、政府としては、感染防止とワクチン接種を徹底して行っています。沖縄が、この困難を乗り越え、昨年完成した那覇空港第二滑走路や、七月末に全面開通することとなった名護東道路なども活用し、二十一世紀の「万国津梁(しんりょう)」として世界の架け橋となるよう、私が先頭に立って、皆様とともに、沖縄の振興を進めてまいります。
来年五月には、沖縄の本土復帰五十年という大きな節目を迎えます。沖縄の更なる発展に向け、現行の沖縄振興特別措置法期限後の沖縄振興の在り方について、しっかりと検討を進めてまいります。
結びに、沖縄の地に眠る御霊に平安を、御遺族の方々には御多幸を、心よりお祈りし、私の挨拶といたします。